カテゴリー
Exhibition

【2人展】那須佐和子×布田葉太郎「最終観測者、?」

渋⾕区松涛⽂化ストリートに構える現代アートのコマーシャルギャラリーbiscuit gallery(渋⾕区松濤)では、美術作家の那須佐和子と布田葉太郎による展覧会を開催致します。
会期は2022年2月10日(木)から2月20日(日)まで。

那須佐和子は、2022年2月に本展を含む3つの展覧会を同時に開催致します。2月6日(日)からは銀座 蔦屋書店(中央区)で個展、2月10日(木)からはmyheirloom(千代田区)で個展、そしてbiscuit gallery(渋谷区)にて本展、布田葉太郎との2人展「最終観測者、?」を開催いたします。
3展覧会同時開催についての詳細はこちらをご確認ください。

布田葉太郎は、2019年4月に開催された個展以来、今回約3年ぶりの新作発表となります。

アーティストプロフィール

那須佐和子 Sawako Nasu

1996年東京都出身。
2021年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業、現在は東京藝術大学大学院美術研究科修士課程油画第一研究室に在籍中。同学O氏記念賞奨学金に認定される。
主な展示として多⽥恋⼀朗との2人展「b⇔d」(biscuit gallery, 2021, 東京)がある。

布田葉太郎 Yotaro Fuda

1996年 千葉県出身。
2019年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻 卒業
2019年4月個展「猫とトポロジー」(Bambinart Gallery)

開催概要

那須佐和子×布田葉太郎2人展
「最終観測者、?」

会場:biscuit gallery 1階〜3階
会期:2022年2月10日(木)〜2月20日(日)
時間:13:00〜19:00(土日祝:12:00〜18:00)
※月〜水休
入場:無料
主催:biscuit gallery

カテゴリー
Exhibition

【グループ展】biscuit gallery group exhibition 「re」

この度biscuit gallery では2022年度の最初の展覧会として、7名のアーティストによるグループ展「re」を、2022年1月6日(木)から23日(日)の会期にて開催致します。

展覧会タイトル「re」は「再び」「反対」などの語意を形成する、英語圏におけるプリフィックス(接頭辞)を引用したもので、その語義的な理由から、必然的に、「re」とは何かしら元となる、あるいは対峙するための事柄を伴います。本展示では7名の時代を共有するアーティストを一つの企画においてグルーピングし、そうすることで今日の日本において見受けられる美術動向、またこれまでその流れの一端を省みる狙いがあります。

とはいえ、参加するアーティスト達の間には、作風やそれぞれが辿ってきたキャリア、また抱えている課題意識の点でも大きなバリエーションが見受けられ、彼ら彼女らを簡単に一括りにすることはできません。強いて指摘されるとすれば80年代以降に生まれ、その活動を2010年代以降にスタートさせているという点、また作家性を形成する過程において日本に固有の美術表現、技材、歴史について学んでいたという点が指摘できます。

本展の参加アーティストは以下の7名です。

いくつかの断片的なイメージ、色彩をアッサンブラージュしながら女性像を組み立ていく中原亜梨沙、江戸期などの日本美術の絵画表現を巧みに要素分解し、そこに平成やゼロ年代のTVゲームやカードゲームのカルチャー要素を組み込み、現代の時間軸に日本美術をリプレイスする古家野雄紀。

平安から桃山・江戸に連なる日本絵画が元来もつ、華やかさや荘厳性を手掛かりにスタディし、そこから得た絵画性と20世紀的なポップ・アートの様式を掛け合わせ、日本美術をグローバルなコンテクストに組み込んでいく出口雄樹、ウェブ上において起こるバグを現代の風景として解釈し、日本画材のマテリアルな質感によって「データ/イメージ→物質化」のプロセスを作品化する鈴木康太。そして浮世絵や春画から固有の肉体表現を読み解き、肉感表現に視点の一つを置き、曰く「人肌のようなテクスチャー」を持った和紙に描き出すタニグチカナコ。

作家本人が「オフペインティング」と名付ける、絵具を拭うことによって幽遠な状況を描き出し、理想と自らの間にある距離感やそれを感受している肌感覚を絵画体験として提示する菊地匠。「記憶する/忘却する」という認知状の現象をテーマに、支持体にスチレンボードや日本画材を用い、あたかもレリーフのような強度とテクスチャーを備えた平面作品をつくり上げていく大庭孝文。

各自が抱える問題も、作品そして制作のスタイルも、それぞれ全てが当人だけの様式として錬成されているものであり、それらは一つとして重なるものはありませんが、にもかかわらず彼ら彼女らを、あえて一つの展覧会において並列させるのは、やはりタイトルにもある「re」という思考に他ならないでしょう。

 

今日の私たちが享受するグローバリズムは、それを一つの観点から切り取るならば、一重にはモラルや価値観の共有化が挙げられます。ジェンダーや人種等による差別、急速に進む気候の変動など、私たちが共有する問題は多く、またネットの台頭によって世界の問題は直ちに自分たちの問題へと置換され、文化におけるシームレスな環境が整うなか、それでもなおある種の自我を保ちうる一つの方法は、自分たちの文化の系譜を改めてたどり、それを礼讃でも否定でもなく、また嘲笑でもなく、何らの固定観念をも挟まず、明白な現代的視座から再考することにあるのではないでしょうか。

美術の世界も同様であり、かつて日本にあり、今も日本にあり続ける特定の美術様式と外部からインストールされた美術様式とが同居するこの国において、また数多くの美術動向が生まれたこの地域の美術の歴史において、その突端にいる私たちの時代にはどのような表現があり得るのかを、今回の7名のアーティストとともにご紹介できたら幸いと考えます。それぞれのアーティストは、美術的な出発点は大枠として共通しながらも、誰一人として例外なく固有の問題意識を持ち、そしてそこから飛躍をする膂力を宿した作品を提示しています。彼ら彼女らの作品に、あたかも胎動するかのように煌めいている、その「re」を成し遂げる力を、ぜひとも年のはじめに、ギャラリーにて体感して頂ければ幸いです。

奥岡新蔵

 

アーティストプロフィール

大庭 孝文 | Takafumi Ohba
1988年大阪府出身。2013年に広島市立大学芸術学部美術学科日本画専攻を卒業、2018年同大学院博士後期課程を単位取得退学。主な個展に「新世代への視点2019 大庭孝文展」(ギャラリーなつか, 2019, 東京)、「符号化された景色」(ラピスギャラリー, 2020, 広島)、主なグループ展に「第26回 臥龍桜日本画大賞展」(大賞受賞, 岐阜県美術館, 2015, 岐阜)、「新進芸術家選抜展 FAUSS」(3331 Arts Chiyoda, 2018, 東京)、「WHAT is Art ? 展」(WHAT CAFÉ, 2021, 東京)などがある。

菊地匠 | Takumi Kikuchi
1991年栃木県生まれ。2015年東京芸術大学美術学部日本画専攻卒業、17年同大学大学院美術研究科芸術学専攻修了。主な個展に、「朝には消えていた天使」(ギャラリー風、東京、2017)、「In Pause.」(ギャラリー碧、栃木、2019)、「in Platea」(ギャラリー碧、栃木、2020)、グループ展に「ART = Research 探究はどこにあるのか」(小山市立車屋美術館、栃木、2020)などがある。

古家野雄紀 | Yuki Koyano
1993年愛知県出身。2019年東京藝術大学大学院修士課程デザイン科描画・装飾研究室を修了。制作デザインN賞(中島千波賞) 受賞。

鈴木康太 | Kota Suzuki
1993年静岡県出身。2019年に多摩美術大学大学院前期博士課程日本画研究領域を修了。主な展示に「もう一つの眺め」(KIYOSHI ART SPACE,2021,東京)、「多摩美術大学助手展2021」(FEI ART MUSEUM YOKOHAMA, 2021, 神奈川県)、「イケセイスタイル」(西武池袋アートギャラリー, 2021, 東京)、「SHIBUYA STYLE vol.14」(西武渋谷美術画廊, 2020, 東京)などがある。現在、多摩美術大学統合デザイン学科助手。

タニグチカナコ | Kanako Taniguchi
1996年広島県出身。京都精華大学芸術学部日本画コースを卒業、京都精華大学大学院芸術研究科博士前期課程を修了。これまでの主な個展に「開かれた密室」(art space NUI, 2021, 京都)、主なグループ展に「六根由里香×タニグチカナコ 2人展 pile」(Gallery coco, 2021, 東京)がある。

出口雄樹 | Yuki Ideguchi
1986年福岡県出身。2013年に東京藝術大学美術学部絵画大学院修士課程日本画専攻修了。2013年より渡米し、ニューヨークを中心に日本、アメリカ、フランス、ポーランド、インド、韓国、中国、台湾などで作品を発表。主な個展に「LIFE GOES ON」 (そごう千葉店美術画廊 , 2021, 千葉)、「出口雄樹展 -Art is Inside You-」(西武アート・フォーラム , 2021, 東京)、「Waterfronts」( RESOBOX, 2017, NY/USA)などがあり、主なグループ展に「KATSUSHIKA HOKUSAI. PASSAGES…」(クラクフ国立美術館, 2021, ポーランド)、「Collectors’ Collective vol.4 Osaka」(TEZUKAYAMA GALLERY, 2021, 大阪)」、「接力20/第四棒」(YiCollecta, 2020, Taiwan)」など多数、また主なコレクションにクラクフ国立美術館、北原照久コレクション、明王物産コレクション、Leo Kuelbs Collectionがある。

中原亜梨沙 | Arisa Nakahara
アートフェア東京など国内外での展示多数。化粧品広告、挿絵に採用。2016年『ゆうなれば花』、2021年『BORDERLINE』刊行

 

WEB版美術手帖に掲載された関連インタビューはこちら

 

開催概要

biscuit gallery group exhibition
「re」

会場:biscuit gallery 1階〜3階
参加アーティスト:大庭孝文、菊地匠、古家野雄紀、鈴木康太、タニグチカナコ、出口雄樹、中原亜梨沙
会期:2022年1⽉6⽇(木)〜1⽉23⽇(⽇)
時間:13:00〜19:00(土日祝:12:00〜18:00)
※月〜水休
入場:無料
協力:奥岡新蔵
主催:biscuit gallery

 

カテゴリー
Exhibition

買える!コレクター展「Collectors’ Collective Vol.5」

渋⾕区松涛⽂化ストリートに構える現代アートのコマーシャルギャラリーbiscuit gallery(渋⾕区松濤)では、買える!コレクター展「Collectors’ Collective Vol.5」(通称:コレコレ展)を開催いたします。

会期は2021年12月2日(木)から12月19日(日)まで。

コレコレ展は、2019年の第1回開催から好評を博し、本展が5回目の開催となります。
※過去の開催に関しては以下のリンクより参照ください。

Collectors’ Collective公式サイト:https://collectors-collective.com/

これまでの展覧会と同様に、3名のアートコレクターが集い、それぞれのアートコレクションを披露すると同時に、コレクション作家や注目の作家の新作が披露されます。

参加するアートコレクターは以下の3名です。

石川賢司(1階展示担当)

[自己紹介]
30代後半のアートウォッチャー。
副業で会社員をしている。
コレクション歴は2年半、現在61点の作品を所有。
2007年、無理矢理連れて行かれたジョー・プライスコレクション展で長澤蘆雪にハマり、そこから国内・海外の美術館を巡り、近現代までのアートに触れてはいたが、2018年、直島で宮島達男作品に触れ、同時代のアートを追う面白さに目覚める。
初めてのコレクションは、アートフェア東京2019だった。
作品や作家が好きなのは大前提として、中でもいくつかあるコレクション基準の一つが【独自性】
今回はそれが色濃く出る作家の皆さんに協力していただいた。

ゆとりーマン(2階展示担当)

[自己紹介]
普段は都内に勤務する20代後半のサラリーマン。

コレクション歴は1年半。自身と同世代の作家を中心に、現在約40点の作品を所有。
これまでアートとは無縁の生活を送っていたが、”13歳からのアート思考”を読んだことをきっかけに現代アートに興味を持ち、サラリーマンコレクターの道へ。
現実社会と棲み分けするべく、アート活動時には「ゆとりーマン」を名乗っており主にTwitterにて蒐集した作品の紹介や鑑賞した展示の感想を発信。
残す必要に駆られた作品を蒐集しており、数十年後振り返った際、移りゆく自分史を体現できているようなコレクションを目指している。

gutsurohi(3階展示担当)

[自己紹介]
多摩美大卒、作家活動、画廊勤務の経験をもち、買い手、売り手、作り手の視点を持つコレクター。
現在は会社を経営する40歳で、コレクション歴は7年。
同世代である80年代生まれのペインターを中心にコレクション。全てが日本の作家。その中でも、過小評価されていると感じる作家を応援している。現在、約60点の作品を所有。初めて買った作家は今津景。
自宅は、アートコレクションをすることを前提に建築家を選び、設計開始と同時期にコレクションを始める。
空間を最大限に活かすために、大型の平面作品をコレクションすることが多い。
今回のコレコレ展では、同世代の作家を中心に、キャリアを重ねながらも、新たな表現を模索し続けている作家を選定した。

 

本展開催に際し、コレコレ展3回⽬の参加者でもあるアートコレクター塚⽥萌菜美⽒よりテキストを寄稿頂きました。


市⺠コレクターが世界を揺るがす。
ーSNSの普及、アートの⺠主化、そしてコレクターズ・コレクティブ展ー

「ハーブ&ドロシー」という映画にもなった夫婦のことをご存知だろうか。ハーブは郵便局員、妻のドロシーは図書館司書で、年収は260万円ほどというごく一般的な夫婦である。しかし、アート業界に携わる人物に二人のことを聞くと、彼らの存在は伝説のような熱狂をもって語られる。

二人の存在がこれまでに際立つのは、決して資金的に恵まれた環境にないものの、その審美眼と行動力で、歴史に残るコレクションを築き上げたという、ある種のコレクターのアメリカンドリームであるからだ。世界中に分布するアートワールドは、上流階級や富裕層、特権階級がひしめく現代にあっては珍しい社交空間であり、素晴らしいコレクションを築き上げるには相応の資金力やコネクションや、ブランディングが必要となる。殊にそれが顕著なアメリカのアート界にあって、公務員夫妻が1960年代から半世紀をかけてパブロ・ピカソやロイ・リキテンシュタインといった当時を代表する作家からヨーゼフ・ボイス、シンディ・シャーマン、村上隆らの作品を収集し、終活として美術館に全コレクションを寄贈したことは、まさに驚きと多大なる尊敬を集めたのである。

さて、この二人の生涯が紹介された映画が日本で公開となった2012年から2013年周辺について思い返してみたい。「日本にアートマーケットは存在しない」と言われた時期を経て、「やっと最低限のインフラが整ってきた」[1]ものの、リーマンショックでアート界にも急激な落ち込みが見られた2008年から、やや立ち直りが見え始めた時期である。既にTwitterとFacebookが日本語対応して5年が経ち、翌年にInstagramの日本語対応化を控えたこの年付近から、日本国内で草の根的なアートラバーたちの先駆ともいうべき人々が、日々のギャラリー訪問やコレクション作品について、いわゆるSNSという統一プラットフォームにて発言をし始めた時期にも重なっている。もちろん彼らは以前にも存在していたものの、ブログなど個々のウェブサイト内で完結していた日々の記録が、こうしたSNSに集約されてきたと言えるだろう。結果的に、多くの人々が各サイトに散り散りになっていた情報を、日々のタイムラインで収集できるようになり、アカウント上での交流が始まり、自らのライフスタイルに導入し、その輪が拡大していく現象が始まったのである。これは何もアートジャンルに限った話ではない。アイドルやミュージシャンのファンでも美味しいレストランを追い求めるコミュニティにも均一に訪れたウェブ上のコミュニティの在り方の変化である。しかし、アートにおいては、ある特徴からより交流が進みやすかったと言えるかもしれない。

それはアートの展覧会が必ず実際の場で行われていたことである。それも美術館ならまだしも、ギャラリーの場合は1週間で完結するイベントもある。その場に行くことは、必然的に普段フォローしている/されている人たちとエンカウントする可能性が非常に高いということだ。記帳されている名前から(アカウント名を書く人もいる)、アカウント上で交流のある人に限りなく近いところにいたということが分かる性質もある。ちょっとしたオフ会のような現象も起こりえるわけだ。

そうした中で2019年に誕生した「コレクターズ・コレクティブ展」はひとつの必然だったかもしれない。コレクション展示でありながら、その作家の新作も買える、新たな形式の展覧会である。もちろんコレクションを見せる場でもあるため、ざっくばらんに言うと気軽なオフ会兼ノウハウ共有の場でもある。アカウント上で交流のあった3人のコレクターが自らのコレクションを展示して紹介し、在廊し、リアルな場で来場者の質問に答える。普段はオンラインで交流しているため忘れがちだが、普段フラットに接しているアカウントでも背後には会社員から社長など、職業もジェンダーも年齢も様々な生身の人間がいる。つまり、初心者にとっても展示方法や購入方法などのノウハウ共有の場でありながら、日常生活で触れ合わないであろう人たちと部活感覚で繋がれるのである。また展覧会形式であるため、訪れた人のフォロワーが来場し、また輪が広がる。別の展示に行ったときに、知り合いとしてアート談議ができる交流が誕生するのである。

こうした状況は、アートの民主化という大きなうねりとして実際にアートの既存の評価軸を変革しつつある。限られた一部の有力者たち(しばしば同一の出自や背景を持つ)が良し悪しを判断していた状況に、多くの市民コレクターの声が響き始めているのだ。つまり既存の評価軸から零れ落ちていた作家たちに光が当たっているのだ。たとえ専門家でも、日本に何千とあるギャラリー全ては回れないが、アート系のSNSアカウントを見て、興味を持った企画に足を運び、その後その専門家がキュレーションする展示に該当作家が呼ばれる現象は実際に起きている。こうした民主主義による視点の多様化が、確実に種をまき、水を与え、出芽した先に光を照らしてきた。その中でもインフルエンサー化した会社員のコレクターがアート系の雑誌・ウェブメディアに取り上げられ、連載を持つことも見受けられるようになってきた。

同等の現象は日本のみならず、同様にアート市場が発展途上であったアジア諸国でも展開されてきている。つまり美術史の枠組みを自国で持たないがゆえに、お手本として示されてきた(もとい近代化の名の下に着せられてきた)欧米各国の白人男性が維持してきた評価軸に、こうした多様な背景を持つ市民の声が届き始めている。アジア系コレクター層の台頭やMe Too運動、Black Lives Matter運動が美術史の書き手そのものを見直す契機になっているのである。これはすなわち美術史の変革である。近年女性や多様なジェンダー、人種による美術史の書き直し、コレクション方針の見直しがなされ始めているのはそのためだ。

2021年12月、「コレクターズ・コレクティブ展」は第5回目を迎える。今回集った3名も、各々ハーブとドロシーのように足しげくギャラリーへ通い、情報収集しながらそれぞれの立場に根差した視点で作品を見つめてきた。三者三様のコレクションはこのアート民主化時代に何を語り、どのような相互関係を生むのだろうか。

[1] 小山登美夫『現代アートビジネス』角川新書、2008年、p.181

塚田萌菜美


 

5回目となる本展の特徴は、3名のコレクターが1フロアを担当し、フロアの展示をキュレーションいたします。

 

開催概要

買える!コレクター展「Collectors’ Collective Vol.5」

会場:biscuit gallery 1階〜3階
参加アーティスト(全14名):青木美紅、網代幸介、岩岡純子、城月、黒坂祐、庄司朝美、田中一太、花沢忍、平野真美、Funny Dress-up Lab、星山耕太郎、松田ハル、三瓶玲奈、渡辺豊 ※50音順
会期:2021年12月2日(木)〜12月19日(日)
時間:13:00〜19:00(土日祝:12:00〜18:00)
※月〜水休
入場:無料
主催:biscuit gallery
協力:Bambinart Gallery、Maki Fine Arts、Yutaka Kikutake Gallery
公式サイト:https://collectors-collective.com/
助成:⽂化庁「ARTS for the future!」補助対象事業

カテゴリー
Exhibition

【2人展】東慎也×飯田美穂「Welcome to the Painting Jungle」

渋⾕区松涛⽂化ストリートに構える現代アートのコマーシャルギャラリーbiscuit gallery(渋⾕区松濤)では、美術作家の東慎也と飯田美穂による展覧会を開催致します。
会期は2021年11月3日(水・祝)から11月21日(日)まで。

東慎也は2020年に京都造形芸術大学大学院を修了、飯田美穂は2018年に同大学院を修了した新進気鋭のペインターです

一見するとかわいらしく、軽妙なタッチで描かれる東の絵画は、様々なイシューをはらんでいます。
また、 顔を「∵」や文字記号に置き換えた名画などをモチーフに描く飯田は、絵画とはなにかをベースに考えます。

それぞれがそれぞれに「絵画」に傾倒するふたりによる2人展は、展示タイトル「Welcome to the Painting Jungle」の通り、ギャラリー展示室の3フロアがジャングルのような絵画空間を作り出します。

顔をちゃんと描かないふたりの個展に寄せて

飯田美穂と東慎也が、2人展をやるという。
僕の中では、ちょっとした事件だ。
(ちなみに、僕にテキストの依頼が来たのはもっと事件だ)

僕は、人との出会い同様、アーティストの作品たちとの出会いも記憶が定かでないことが多いのだが、ふたりの作品との最初の邂逅については、それぞれ鮮明に覚えている。アートフェアと美大内でのアトリエ巡りというシチュエーションの違いはあれど、多様な作品を見て回る中で、圧倒的なユニークネスと完成度で存在感を発していた作品達に足を止められて名前を確認したことは同じだった。以来、それぞれの作家のファンである。

そんなふたりが2人展をやるという。

様々な過去の名画をモチーフに、「描く」ことを描いている飯田と、
人や社会の様々な側面を少しシニカルな目線で捉え、ユーモラスに描く東。

異なるテーマとアプローチのふたりの作品に、しかし、不思議な共通点を僕は覚える。
なんというか、どちらの作品も力が抜けていて、どこか愛嬌があり、類似の鑑賞体験を持っている。
端的にそんな印象を与える外形的な共通点を問われたら、ずばり、「顔」の描写である。
ふたりとも、顔をちゃんと描かない。

よく顔にアルファベットや数字を描く飯田と、
点や線で簡単に表情を描写する東。

コミュニケーションする猿たる僕らは、人を見たら無意識に表情から情報を読み取るようにできているが、ふたりの作品はそれを許してくれない。作品に対峙した際、読み解くヒントを求めて描かれた人物の顔を覗き込むと、「ノーヒント!」あるいは「顔はあんまり関係ありません!」と、さらっとかわされてしまう。この拒絶ではなく、いなされる感じが心地よく、「チェ」と舌打ちしながら僕は他のヒントを拾うために作品の細部に目を向けることになる。そうして手がかりを探りながら、飯田はこの名画をモチーフに何を描きたかったのか?東が今回、焦点を当てたのは人のどの側面なんだろうか?と、作家の制作動機に思いを馳せる。そんなやりとりがなんとも楽しい。

このテキストを書くにあたり、2人展をやることになった経緯やコンセプトを聞いてみようと思ったが、結局、やめてしまった。当日、「ノーヒント」で会場でふたりが創り上げた作品と空間に向き合った方が楽しそうだと思い直したのだ。

そういうわけで、今回の個展に関する固有の情報はこのテキストにはない。
(期待してここまで読み進めた人はごめんなさい)
でも、どうか、皆さんにも、顔は何も語らない代わりに、画面全体が存分に語るペインタリーなふたりの作品と空間を会場で「ノーヒント」でご堪能いただきたい。

そのジャングル体験は、きっと楽しいから。

現代アートコレクター
草野 隆史

アーティストプロフィール

東慎也 Shinya Azuma

ニュースや日頃目にする情景から着想を得たイメージをドローイングに書き溜め、大胆なストロークでキャンバスにイメージを再び描き起こす。東の一見愛らしいモチーフの裏には、貧富の格差やデモなどの世界各地で起こっている時事問題が主題として込められている。

-略歴-
1994年 大阪生まれ
2020年 京都造形芸術大学大学院芸術研究科ペインティング領域修了
現在は大阪、奈良を拠点に活動。

 

飯田美穂 Miho Iida

絵画への愛とオールド・マスターたちへのリスペクトを込めて多様な名画を引用し、抽象化されたイメージを描く。

-略歴-
1991年 愛知県生まれ
2016年 名古屋芸術大学 美術学部 美術学科 洋画2コース 卒業
2018年 京都造形芸術大学大学院 芸術専攻芸術研究科 ペインティング領域油画コース 修了

 

開催概要

東慎也×飯田美穂2人展
「Welcome to the Painting Jungle」

会場:biscuit gallery 1階〜3階
会期:2021年11⽉3⽇(水・祝)〜11⽉21⽇(⽇)
時間:13:00〜19:00(土日祝:12:00〜18:00)
※月〜水休 (祝日はオープンいたします)
入場:無料
主催:biscuit gallery
協力:FINCH ARTS