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Exhibition

やましたあつこ個展 「花びらのワルツ」

このたび biscuit galleryではやましたあつこの個展「花びらのワルツ」を、2021年5月27日から6月13日の会期にて開催致します。

これまで自分の内生的な物語をドローイングの手法を交えたペインティングによって描き、恋をする人たちの健気さ、哀しさ、愛おしさといった私たちが持つ情緒の素朴さや美しさを扱ってきました。本展にあたり、やましたは以下のような言葉を寄せています。

 

私にとって回想は幸せと悲しみが伴う。


記憶に残るほど強い思い出は、たいていが極端にポジティブかネガティブなものが多いから。

だからだろうか、私は自分の人生を振り返ることが好きでないし、たぶん嫌ってさえいる。

でも二人は違う。

私が描いている二人の回想には、思い出には、幸せな瞬間がいっぱいだ。

私は邪魔のない幸せが描きたいし、それはずっと変わらない。

生きている今にも、そして生きてきた昔にも、楽しさが満ちている二人は、間違いなく幸福だ。

今回の展示では回想をテーマに、やましたの世界に生きる二人がかつての自分たちを振り返る様子を描いた作品が並びます。
同時に会場では彼女の活動初期の作品も合わせて展示し、新作において描かれる、「過去を回想する二人の当時」が描かれているペインティングをご紹介します。
この機会にぜひ、ご高覧ください。

 

 

biscuit gallery is pleased to present Atsuko Yamashita’s solo exhibition “Petal Waltz” from May 27 to June 13, 2012.
In the past, she has depicted her own endogenous stories in paintings using drawing techniques, and has dealt with the simplicity and beauty of our emotions such as the health, sadness, and love of people in love. On the occasion of this exhibition, Yamashita had the following to say.

 

For me, reminiscence is accompanied by happiness and sadness.

For me, reminiscing involves both happiness and sadness, because the memories that are strong enough to be remembered are usually extremely positive or negative.

Maybe that’s why I don’t like to look back on my life, maybe I even hate it.

But these two people are different.

The recollections and memories I draw of them are full of happy moments.

This exhibition is based on the theme of reminiscence, and features work depicting two people living in Yamashita’s world looking back at their former selves. At the same time, works from the early days of her career will also be on display at the venue, and paintings depicting “the time when two people are reminiscing about the past” will be introduced in her new works.
We hope you will take this opportunity to visit the exhibition.

 

会期:2021年5⽉27⽇(⽊)〜6⽉13⽇(⽇)
会場:biscuit gallery 1階・2階
協力:TAKU SOMETANI GALLERY
Produced by biscuitgallery

 

作品についてのお問い合わせはContactへお願いします。

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Exhibition

ミノリ初個展 「リトル・ヴォイス」

 ここには主人公はいない。
映画のような重大な物語もない。
小さな声がそこかしこに散らばり、少しの光を帯びている。 例えば言葉のような大きな存在に飲み込まれたらこの光は失ってしまうかもしれない。
そんな儚く弱いものたちの断片だ。

『 リトル・ヴォイス 』 ミノリ

 

ミノリ初個展 「リトル・ヴォイス」

会期:2021年5⽉27⽇(⽊)〜6⽉13⽇(⽇)
会場:biscuit gallery 1階・3階
Produced by biscuitgallery

https://biscuitgallery.com/minori/

 

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Artists

ミノリ/minori

ミノリ/minori

Profile

ミノリ/minori

1992 奈良生まれ
2016 大阪芸術大学 デザイン学科 VAコース 中退
2020 東京藝術大学 美術学部 絵画科 油画専攻 卒業
現在東京を拠点に活動。

作家ステイトメント

点はどこにでも存在する。
それらはときどき、近づいたり、重なったり、つながったり、遠くへ行ったりして、
子どもの遊びのようにあらゆる線を引いていく。
点から生まれたその線は、ある時、言葉になり、境になり、小さな物語を紡ぐこともある。
いつのまにか、何でもなかった場所がだれかの場所になっていたり
だれかの場所だったところが何でもない場所になっていたりするような、
日々止め処なくゆれる世界で、点と点を結んだり、解いたりしながら
何かが立ち現れるまで、私は注意深く対話する。

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Note

【Review】服部芽生(Mei Hattori)国内初展示に寄せて

服部芽生は鎌倉在住の若手写真家だ。

今回ビスケットギャラリーのオープニング展「biscuit gallery Opening Exhibition Ⅱ」にて国内では初となる展示を行った。

展示風景

展示されている作品は《Shake》、《浸食/Erosion》、《House》の3点と、〈デジャヴ/Deja Vu〉シリーズ、本年の新作〈Became Blue〉シリーズの計15点。
これまでウェブサイト上で見てきた彼女の作品とは異なる、新たな表現への試みがなされており見ごたえのある展示となっていた。

展示風景

服部芽生《House》 発色現像方式印画・パネル 2020年 560mm×457mm

「なんでも好きなものを撮ると良いよ」と7歳の誕生日に渡されたのがカメラとの出会い。以来、26歳になる現在までシャッターを切り続けてきた服部。作品制作にはフィルムカメラを使っている。

今、スマートフォンで撮影して、その場で撮影した写真を確認するのは日常的な行為になっている。一方、フィルムカメラでの撮影は、写真を確認するまで手間と時間がかかる撮影方法である。暗室でフィルムを現像液につけてはじめて撮影した像が浮かび上がり、その後に複数の工程を経て、ようやくプリントできる段階になるのだ。

彼女は、現像までの工程を経て、そのときに撮影時の記憶や感情が蘇ってくる感覚を大事にしたいのだという。昨年自宅に現像室を作り、より一層作品制作のプロセスや技法にもこだわるようになったそうだ。

そして、現像後の写真には、トリミングも画像ソフトでの修正も行わない。それは写真は真実を写すものであってほしいと思っているからだという。使用するカメラやフィルムの個性を考慮し、構図を考えて撮るのは勿論のこと、撮影までにも時間をかけ、何度も同じ場所に出向いて、その場所の移り変わりを撮る。その場所の変化とともに、自分の心情の変化を写したいと思い制作しているそうだ。

彼女が真摯に被写体に向き合う眼差しは、作品をみれば伝わってくるだろう。

最初に展示されている「揺れる/Shake」、「浸食/Erosion」、「House」は彼女が得意とするスナップショットに分類される作品だろう。

そっぽを向いて丸まった少女を優しく包む光。空を覆い尽くすように伸びた生命力を感じる木の枝。
歩き慣れた散歩道や子供に向ける、彼女のあたたかい眼差しが感じられる作品だ。
なかでも、「House」は花咲く生け垣のある家の屋根の形に重なって、幾重に連なる電線が画面に反響する緊張感が捉えられている一方で、ぽつんと生け垣を見つめる男性の存在がこの写真に非日常的な印象を与えており面白く感じた。

展示風景〜《デジャヴ/Deja Vu》シリーズ

次に展示されているのは、一転して雰囲気の変わる〈デジャヴ/Deja Vu〉シリーズ。
これらの作品は撮影から現像まで数ヶ月期間をあけ、撮影した瞬間の記憶や感情を曖昧にさせて、撮影した記憶がおぼろな写真を選び取った作品だ。

服部芽生「デジャヴ/Deja Vu》 インクジェット 2020年 420mm×297mm

服部芽生《デジャヴ/Deja Vu》 インクジェット 2020年 420mm×297mm

記録に残っているのに、彼女の記憶には残らなかった写真は、しんと静かだ。

じっと見つめていると、ただ一人でこの光景に投げ出されるような感覚がする作品群。
撮影者の眼差しや感情というのは、記憶を通して写真上に再現されていくのかと考えさせられた。

最後に展示されたのは、今年の新作〈Became Blue〉シリーズ。
鮮やかな青色の画面から浮かび上がる、ほっそりした白い光や、連なる山々のかたち。一見すると青い絵の具で描かれた絵画のようだが、これらも写真作品だ。現代ではあまり馴染みがないが、写真表現にはカメラを用いないものがある。

〈Became Blue〉シリーズは写真の古典技法のひとつのサイアノタイプと呼ばれる方法で制作されている。日本では青写真と呼ばれたものだ。建築図面の複写に長く使われた方法で、そこから意味が転じていき、将来の計画などを指して青写真というようになった。

服部芽生《Became Blue No.17》 サイアノタイプ 2021年 230mm×300mm

実際どのように制作されたのかというと、No.13は特殊な薬液を塗った印画紙の上に流木を置き日光にあてたもので、No.14は印画紙を海の波を時間差をつけてあてたもの、No.17は印画紙を草むらに置いて草花の影が風でゆらめく様子を写し取ったものだそう。

服部芽生《Became Blue No.14》 サイアノタイプ 2021年 130mm×130mm

服部芽生《Became Blue No.13》 サイアノタイプ 2021年 130mm×130mm

紙の上に閉じ込められた海の音や、風のゆらめき、その時間を感じられる作品となっている。

もともと、実験的な写真に興味があったという服部。
今後はサイアノタイプの他に、ガムプリントやケミグラムで制作を行いたいという。

ガムプリントは、20世紀末にまだ芸術として認められていなかった写真の芸術性を確立するために、絵画的な写真を目指したピクトリアリズムの動きの中で広く使われた代表的な印画方法で、ケミグラムは現像液や定着液を用いて印画紙に絵を描くように表現する方法だ。日本ではケミグラムを用いて作られた作品は殆ど認知されておらず、珍しい手法となる。

一体どのような作品ができるのか興味深く、今後の作品発表が待ち遠しい。

Photo:Ujin Matsuo

 

櫻井千夏
Chinatsu Sakurai