渋⾕区松涛⽂化ストリートに構える現代アートのコマーシャルギャラリーbiscuit gallery(渋⾕区松濤)では、美術作家の東慎也と飯田美穂による展覧会を開催致します。
会期は2021年11月3日(水・祝)から11月21日(日)まで。
東慎也は2020年に京都造形芸術大学大学院を修了、飯田美穂は2018年に同大学院を修了した新進気鋭のペインターです
一見するとかわいらしく、軽妙なタッチで描かれる東の絵画は、様々なイシューをはらんでいます。
また、 顔を「∵」や文字記号に置き換えた名画などをモチーフに描く飯田は、絵画とはなにかをベースに考えます。
それぞれがそれぞれに「絵画」に傾倒するふたりによる2人展は、展示タイトル「Welcome to the Painting Jungle」の通り、ギャラリー展示室の3フロアがジャングルのような絵画空間を作り出します。
顔をちゃんと描かないふたりの個展に寄せて
飯田美穂と東慎也が、2人展をやるという。
僕の中では、ちょっとした事件だ。
(ちなみに、僕にテキストの依頼が来たのはもっと事件だ)
僕は、人との出会い同様、アーティストの作品たちとの出会いも記憶が定かでないことが多いのだが、ふたりの作品との最初の邂逅については、それぞれ鮮明に覚えている。アートフェアと美大内でのアトリエ巡りというシチュエーションの違いはあれど、多様な作品を見て回る中で、圧倒的なユニークネスと完成度で存在感を発していた作品達に足を止められて名前を確認したことは同じだった。以来、それぞれの作家のファンである。
そんなふたりが2人展をやるという。
様々な過去の名画をモチーフに、「描く」ことを描いている飯田と、
人や社会の様々な側面を少しシニカルな目線で捉え、ユーモラスに描く東。
異なるテーマとアプローチのふたりの作品に、しかし、不思議な共通点を僕は覚える。
なんというか、どちらの作品も力が抜けていて、どこか愛嬌があり、類似の鑑賞体験を持っている。
端的にそんな印象を与える外形的な共通点を問われたら、ずばり、「顔」の描写である。
ふたりとも、顔をちゃんと描かない。
よく顔にアルファベットや数字を描く飯田と、
点や線で簡単に表情を描写する東。
コミュニケーションする猿たる僕らは、人を見たら無意識に表情から情報を読み取るようにできているが、ふたりの作品はそれを許してくれない。作品に対峙した際、読み解くヒントを求めて描かれた人物の顔を覗き込むと、「ノーヒント!」あるいは「顔はあんまり関係ありません!」と、さらっとかわされてしまう。この拒絶ではなく、いなされる感じが心地よく、「チェ」と舌打ちしながら僕は他のヒントを拾うために作品の細部に目を向けることになる。そうして手がかりを探りながら、飯田はこの名画をモチーフに何を描きたかったのか?東が今回、焦点を当てたのは人のどの側面なんだろうか?と、作家の制作動機に思いを馳せる。そんなやりとりがなんとも楽しい。
このテキストを書くにあたり、2人展をやることになった経緯やコンセプトを聞いてみようと思ったが、結局、やめてしまった。当日、「ノーヒント」で会場でふたりが創り上げた作品と空間に向き合った方が楽しそうだと思い直したのだ。
そういうわけで、今回の個展に関する固有の情報はこのテキストにはない。
(期待してここまで読み進めた人はごめんなさい)
でも、どうか、皆さんにも、顔は何も語らない代わりに、画面全体が存分に語るペインタリーなふたりの作品と空間を会場で「ノーヒント」でご堪能いただきたい。
そのジャングル体験は、きっと楽しいから。
現代アートコレクター
草野 隆史
アーティストプロフィール
東慎也 Shinya Azuma
ニュースや日頃目にする情景から着想を得たイメージをドローイングに書き溜め、大胆なストロークでキャンバスにイメージを再び描き起こす。東の一見愛らしいモチーフの裏には、貧富の格差やデモなどの世界各地で起こっている時事問題が主題として込められている。
-略歴-
1994年 大阪生まれ
2020年 京都造形芸術大学大学院芸術研究科ペインティング領域修了
現在は大阪、奈良を拠点に活動。
飯田美穂 Miho Iida
絵画への愛とオールド・マスターたちへのリスペクトを込めて多様な名画を引用し、抽象化されたイメージを描く。
-略歴-
1991年 愛知県生まれ
2016年 名古屋芸術大学 美術学部 美術学科 洋画2コース 卒業
2018年 京都造形芸術大学大学院 芸術専攻芸術研究科 ペインティング領域油画コース 修了
開催概要
東慎也×飯田美穂2人展
「Welcome to the Painting Jungle」
会場:biscuit gallery 1階〜3階
会期:2021年11⽉3⽇(水・祝)〜11⽉21⽇(⽇)
時間:13:00〜19:00(土日祝:12:00〜18:00)
※月〜水休 (祝日はオープンいたします)
入場:無料
主催:biscuit gallery
協力:FINCH ARTS